第103回
有田陶器市は連日の晴天に恵まれ、4月29日~5月5日までの期間中の人出は112万人と発表されました。これは、2003年の第100回に次ぐ記録ということです。約100年前、焼き物の見本市として始まった有田陶器市も、いまやゴールデンウィークのイベントとして、すっかり全国的に有名になりました。
大量生産時代、高級美術品が売れたバブル期を経て、有田陶器市にも変化が感じられます。洒落たディスプレーの食卓演出、器もそのままお持ち帰りできる朝粥の提供、ラーメンをおいしく食べるための「
究極のラーメン鉢」、焼酎の味や香りを追求した「
焼酎グラス」の共同開発、名物「ごどうふ」など有田の食もアピール。単なるモノではなく、「食」をおいしく豊かにする器をつくっていこうとする姿勢が見られます。陶器市を訪れる人もまた、昔のようにとにかくたくさん買い込むのではなく、気に入ったものを自分のために買う、あるいは陶器市の雰囲気を楽しむといった感じがします。
もちろん私たちも毎年行きますが今年は、静かに音楽が流れる感じのいいサロンで、有田の美しい自然をながめながらお茶をいただき、古伊万里や現代作品を見ることができる素敵なお店でしばしくつろぎました。こんな陶器市の楽しみ方もあったのですね。焼物との心地よい時を過ごすことができるのも、有田の歴史や伝統の技という、しっかりとした基盤があるからではないでしょうか。
この期間、当館にご宿泊されるお客様の約90%は陶器市がお目当てで、「われもの」の宅急便を扱わない日はないほどです。鉄道唱歌に歌われた駅を旅するテレQの番組(4~5月放映)で、武雄温泉と有田が紹介されましたが、明治33年に作られた鉄道唱歌に♪疲れて浴びる武雄の湯 土産にするは有田焼♪ と歌われています。こればかりは、昔も今も変らないようです。(テレビを見ました、とのお電話多数いただきありがとうございました。)